学習テキスト
行政法総論
−目次−
以下はこのページのもくじです。
問題第1問 行政法における「行政」の意義
問題第2問 行政の実質的意義と形式的意義
問題第3問 行政と司法作用の区別
問題第4問 行政の分類
問題第5問 日本における伝統的な行政法理論
問題第6問 行政法の古典モデル
問題第7問
問題第8問
問題第9問
問題第10問
問題第11問
問題第12問
問題第13問
問題第1問
○行政法における「行政」の意義について
※行政の意義については、積極的に定義づけを行うことによって、 @「概念の統一性、明確性を確保しようという立場」と、 A「それを放棄し消極的に定義づけられるにすぎないとする立場」がある。
【論点と問題の所在】 ○重要 ●行政法における「行政」の意義についてどのように解すべきか。
反対説 ・行政法とは、 法の下に、法の規制を受けながら、現実的具体的に国家目的の積極的実現を目指して 行われる、全体として統一性をもった形成的国家活動をいう(積極説)
【理由:根拠】 行政の概念が積極的に定義されないならば、全体としての内的統一性が認められ る独立の学問としての行政法学も存在しないはずである。
しかし 行政の多様化が進む現代においては行政の積極的定義が困難である一方、積極的 定義付けをする意味及び必要性が乏しい。
思うに、歴史的には、絶対王政の下で王に集中していた国家権力から、立法権と 司法権が分離・独立し、残ったのが行政権である。
したがって、行政とは、 国家作用の中から、法規の定立行為としての立法作用、国家の刑罰権の判断作用及び 一定の裁判手続によって人と人の権利義務を判断する民事司法の司法作用を除くもの をいうと解する(控除説)。
(A)消極説(控除説):通説 ◎行政とは、 ⇒「国家作用の中から、法規の定立行為としての立法作用、国家の刑罰権の判断作用 および一定の裁判手続によって人と人の権利義務を判断する民事司法の司法作用を除 くもの」をいう。
@絶対王政の下で王に集中していた国家権力から、立法権と司法権が分離・独立し、 残りの作用が行政とされたという歴史的沿革から。
A多用な行政活動をもれなく包摂できるというメリットがある。
B行政の多様化が進む現代においては行政の積極的定義が困難である一方、積極的定 義付けをする意味および必要性が乏しい。
C多用な行政作用を余すところなく捉える点で一応の論理的欲求を満足させていると いえる。
(B)積極説:少数説(これは目的実現説の定義) ◎行政とは、 ⇒「法の下に、法の規制を受けながら、現実的具体的に国家目的の積極的実現を目指 して行われる、全体として統一性をもった形成的国家活動」をいう。
【理由】 ・行政の概念が積極的に定義されないならば、全体としての内的統一性が認められる 独立の学問としての行政法学も存在しないはずである。
【批判】 ⇔行政の積極的定義として論じられているのは、「行政の特徴なり傾向なりを大つか みに描いてみたもの」にすぎない。 ⇔そもそも、行政の積極的定義がなければ、行政法学という学問が成り立たないわけ ではない。 ⇔行政の積極的定義をすることが、個別の行政法上の概念(たとえば行政行為や行政 契約の意義など)との関係で必ずしも連動していない。
(B−2)積極説2(手島説) ◎行政とは、 ⇒「本来的および擬制的公共事務の管理および実施」をいう。
※擬制的とは、相異なる事実を法的には同一のものとみなし,同一の法律的効果を与 えることである。
※これには、そもそも行政法を学ぶにあたって行政概念の理論的な定義を試みること 自体、あまり有意義な作業であるとは考えられないとの指摘もある。
問題第2問
○行政の実質的意義と形式的意義について
・行政法の意義における消極説及び積極説の争いは、国家作用自体の性質に着目した 行政概念に関する争いであり、これを実質的意義(意味)における行政といいます。
※これに対し、ある作用を担当する機関に着目して、行政機関が行う作用の全体を形 式的意義(意味)の行政といいます。 ⇒たとえば、行政機関は政省令の制定権限を有しますが、これは実質的には立法作用 であり実質的意義の行政の作用には含まれませんが、行政機関が行う以上形式的意義 の行政的意義の行政の作用ということができます。
※また、行政機関が行う不服申立の裁決なども、実質的には司法の作用であり実質的 意義の行政の作用に含まれませんが、形式的意義の行政の作用ということができます 。
・行政機関は政省令の制定権限を有する。 ⇒これは実質的には立法作用であり実質的意義の行政の作用には含まれないが、行政 機関が行う以上、「形式的意義の行政の作用」ということができる。
・行政機関が行う不服申立の裁決なども、実質的には司法の作用であり実質的意義の 行政の作用には含まれないが、形式的意義の行政の作用ということができる。
問題第3問
○行政と司法作用の区別の難しさについて
・行政事件に関する裁判は明治時代には行政権に属していた(明治憲法61条)が、 現在では司法権に委ねられている(憲法76条)。
・法の定立と適用という理論的な区別は単純明快であるが、法適用作用の中での行政 と司法の区別は決して理論的な区別ではなく、むしろ西欧諸国の歴史上の発展の結果 として生まれた、単なる相対的・政策的な区別にすぎない。
⇒そうである以上、もとが相対的な司法と行政作用の区別を、積極説のように理論で 割り切ろうとしても、割り切れない余り(=例外)が出てきてしまうのは当然のこと であり、そこで、積極的な定義づけから漏れ(立法・行政・司法のどれにも当てはま らない作用)の出現を防ぐという意味で、消極説が多数説を占めているといえるので ある。
問題第4問
○行政の分類について
※行政の活動には、「規制行政」、「給付行政」、「調達行政」など様々な種類があ ります。
・行政は、権力行政、非権力行政と2つの性質に分けられます。
@権力行政は、相手方の意思にかかわらず一方的に行われる行政。 例えば、課税処分のようなものです。 (例)行政処分、行政強制など
A非権力行政は、私たち国民の同意のもとに行われる行政のこと。 (例)行政計画、行政契約、行政指導など
※これらの性質を理解することで、行政の活動についての理解度が異なってくる。
1 規制行政(侵害行政) ・規制行政とは、権力を用いて国民の権利・利益を制限したり剥奪したりすることに よって、社会の秩序を保つための行政活動です。 ⇒背景には、警察の観念があります。
※規制行政の手段として、ある行為を命令、禁止、場合よっては実力行使をすること によります。しかし、これらはすべて法律の根拠が必要です。 なおかつ、必要最小限にとどめておかなければなりません。
※最も重要な手段は、許可制を設けることで個人の行動を管理するということになる 。
2 給付行政
・給付行政とは、国民に一定の権利・利益を与え、公共の利益を増進させる行政活動 のことをいいます。
※背景として、20世紀に市民生活の行政の依存性が深まり、国家の干渉を嫌う自由主 義国家から積極的な国家介入を認める福祉国家へ、国家観が変容したということがあ げられる。
⇒よって、公共の福祉を増進するため、公平性が重視されており、国民にとってプラ スの行政活動といえる。
※具体的には、生活保護、水道水の給付、ゴミの処理、国公立学校における教育が給 付行政にあたります。
3 調達行政
・調達行政とは、行政活動を行うための必要な資金、土地を調達するための行政活動 のことをいう。
※やはり、規制行政や給付行政などを行うためには資金が必要となります。 ⇒そこで、税金の徴収などの国民にとってマイナスの行為ではありますが、より良い 公共福祉を行うための活動が、調達行政といいます。
その他 ・人的手段の確保としては、人事行政がある。 ⇒組織の個々のポストに必要な人材を確保し,さらに,その能力を十分発揮させるだ けの勤労意欲をもたせるための活動ないし制度である。
4 調整行政
・私人間の紛争に対して、司法的解決方式に先立って、行政機関が、私人間の利害調 整を担当する行政をいう。
※調整行政の重要性 ・特に規制緩和政策の実施にともない、私人間の紛争が増大する可能性が出てきた現 代においては調整行政の重要性が高まっている。
5 私経済的行政
・まったく私企業と同じ立場に立って行う行政のこと。
※私経済的行政に関する問題提起 ・これは一般的に民法が直接適用される分野であるということができるが、はたして 常にそれでよいか近年問題にされつつある分野である。
6 権力行政と非権力行政
【意義】 @権力行政 ※行政が上から、国民に対して作為(〜せよ)と不作為(〜してはならない)という 命令や強制などの形で行動することを指す。 (行政行為は、この権力行政の典型である。)
・たとえば、課税処分に対して納税者が納税しない場合に督促したり、最終的には差 押えしたりすることも、この権力行政の一つの場面である。
A非権力行政 ※行政が、私人と対等の立場で交渉し、または一定の行為を促すタイプの行政活動で ある。
・その典型は土地買収のための交渉と契約である。 ⇒また、税務相談や、納税のための記帳の指導などの行政指導も強制力はないことか ら、この非権力行政に含まれる。
【意義】 ・規制行政と給付行政に対応する用語である。 ・より技術的に権力的手法を用いる行政(権力行政)と非権力的な手法を用いる行政 (非権力行政)という意味で用いられる場合もある。
・基本的に規制行政と権力行政、給付行政と非権力行政とで連動する場合が多い。
2)規制行政であっても非権力的な手法を用いる例 ・規制行政において行政指導という手法が用いられる場合
3)給付行政であっても権力的な手法を用いる例 ・都市公園などに売店を出すときには許可が必要である (都市公園法5条2項)
問題第5問
○日本における伝統的な行政法理論の考え方について
1)行政の外部関係と内部関係の区別 ・ドイツの行政法理論に影響を受けた我が国の行政法理論は、行政活動という現象を 、基本的に「行政主体」と「私人」の間の相互関係として捉える。
この関係を「行政の外部関係」と呼び、これを規律する法が「行政作用法」と呼ばれ る。
・他方で、「行政主体」の内部組織における関係を「行政の内部関係」と呼び、これ を規律する法分野が「行政組織法」であるが、前者とは著しく内容を異にする。
2)行政の外部関係と内部関係の区別の重視 ・行政主体と私人との対立関係を前提とし、行政の“内”と“外”との区別を基本的 な出発点とする考え方(「行政主体」と「私人」の対立ないしは行政の「内部関係」 と「外部関係」との区別、という二元的方式)は、 ⇒国民の代表である議会が制定した法律で行政権を拘束・制限し、そのことによって 、「基本的な関心事である国民の権利・利益を行政権からの侵害に対して保護する、 」というヨーロッパ型近代法治国家原理を基本的な出発点としている。
・そこで、行政法理論は、行政主体の行為によって、私人の権利・利益がどのような 影響を受けるかの問題、すなわち、その「活動形式(行為形式)」がどのようなもの であるかの問題が重要な意味をもった。
3)行政行為の重視 ・行政の過程は、さまざまな個々的行為から構成されるが、 ⇒その行為形式の中でも、従来、最も重要視されてきたのが「行政行為」という行為 形式である。 ・従来は、行政行為という法形式を中心として、法律→行政行為→強制行為という三 段階構造が、「行政の過程の基本的骨格を成すという考え方」がなされてきた (「行政行為」概念を中心とした三段階構造モデル)。
4)伝統的行政法理論へ現在向けられている批判 ・伝統的行政法理論における、「行政主体」と「私人」の対立ないしは行政の「内部 関係」と「外部関係」との区別、という二元的図式に対して、批判が向けられている 。
・「行政行為」概念を中心とした三段階構造モデルによる行政の把握に対しても、批 判が向けられている。
問題第6問
○行政法の古典モデルについて
T)大陸モデル 1)フランス ア)フランスの特徴 ・フランスでは、革命前・革命後を通じて「行政権と司法権の厳格な分離の思想が特徴的」である。 イ)フランスの行政法 ・違法行政の是正は、司法権ではなく、組織的には行政部内の機関に委ねるという政策が選ばれ、 ⇒それが、歴史的な変遷の後、「裁判機構として独立性を獲得していき、行政裁判制度が確立」した。
・行政裁判制度の頂点に立つのがコンセイユ・デタ(行政裁判所の最終審)である。 ・コンセイユ・デタの管轄に属する法は、公法として、私法から独立した自律的な法を形成してきた。 ⇒つまり、独自の行政法が生まれたのであり、この意味でフランスは行政法の母国とされる。
2)ドイツ ・ドイツでは、フランスより時期は遅れ、また、それぞれの領邦国家により状況は異なってはいたが、 ⇒実体私法上の法律関係に関する事件を管轄する司法裁判所とは別に、行政部内に行政活動の是正にあたる行政裁判所制度が採用されるに至った。 ・これとあいまって、ドイツにおいても、実定法秩序に公法と私法の区別が生じた。
3)日本 ・明治憲法の制定過程で、伊藤博文ら関係者は、プロイセン的行政裁判制度の導入に踏み切ったことから、日本においても、大陸法、特にドイツ法的な意味における行政法の成立が語られることとなり、ドイツ行政法学を摂取して、公法と私法の二区分を基礎とした日本の行政法学が形成されていった。
U)英米モデル 1)イギリス ア)沿革 ・イギリスにおいては、大陸法的な厳格な三権の分立形態はとられていない。とりわけ、行政と司法の区別は明確でなかったのである。
・イギリスのコモン・ロー裁判所という通常裁判所で、私人への権利侵害に対する救済手続が行われ、大陸的な特別の行政裁判所という発想は登場しなかった。
※この点、イギリスの代表的憲法学者ダイシーは、大陸法とは異なり、イギリスでは、特権的地位は行政には存在せず、行政といえども通常裁判所のコントロールに服する、これがイギリスのrule of lawの原則であるとしている。
イ)発展 ・20世紀になり、イギリスにおいても、行政の活動分野が拡大し、立法機能や裁判的機能を行使する行政機関が生まれ、これがようやく法律学の注目を集めるようになった。 ※しかし、それは大陸法的な、私法に対し自立的な法秩序としての公法、行政法まで意味するものではなかった。
2)アメリカ ・アメリカもイギリスと基本的に同様であり、大陸のような独立の行政裁判所が設置されるということはなかった。 ・しかし、各種の行政委員会の設立にともない行政法というものがある程度意識されるようになった。
V)日本における伝統的な行政法理論の考え方 1)行政の外部関係と内部関係の区別 ・ドイツの行政法理論に影響を受けた我が国の行政法理論は、行政活動という現象を、基本的に「行政主体」と「私人」の間の相互関係として捉える。 この関係を「行政の外部関係」と呼び、これを規律する法が「行政作用法」と呼ばれる。
・他方で、「行政主体」の内部組織における関係を「行政の内部関係」と呼び、これを規律する法分野が「行政組織法」であるが、前者とは著しく内容を異にする。
問題第7問
○行政の外部関係と内部関係の区別の重視について
・行政主体と私人との対立関係を前提とし、行政の“内”と“外”との区別を基本的な出発点とする考え方 (「行政主体」と「私人」の対立ないしは行政の「内部関係」と「外部関係」との区別、という二元的方式)は、 ⇒国民の代表である議会が制定した法律で行政権を拘束・制限し、そのことによって、「基本的な関心事である国民の権利・利益を行政権からの侵害に対して保護する、」というヨーロッパ型近代法治国家原理を基本的な出発点としている。
・そこで、行政法理論は、行政主体の行為によって、私人の権利・利益がどのような影響を受けるかの問題、すなわち、その「活動形式(行為形式)」がどのようなものであるかの問題が重要な意味をもった。
問題第8問
○行政行為の重視について
・行政の過程は、さまざまな個々的行為から構成されるが、 ⇒その行為形式の中でも、従来、最も重要視されてきたのが「行政行為」という行為形式である。
・従来は、行政行為という法形式を中心として、法律→行政行為→強制行為という三段階構造が、「行政の過程の基本的骨格を成すという考え方」がなされてきた。
(「行政行為」概念を中心とした三段階構造モデル)。
問題第9問
○伝統的行政法理論へ現在向けられている批判があるが、これについての説明
・伝統的行政法理論における、「行政主体」と「私人」の対立ないしは行政の「内部関係」と「外部関係」との区別、という二元的図式に対して、批判が向けられている。
・「行政行為」概念を中心とした三段階構造モデルによる行政の把握に対しても、批判が向けられている。
問題第10問
○行政法の特質について
T)行政法の意義 1)行政法 ・行政法とは行政に関する法をいうが、我が国において、行政法と称する統一的な法典が存在するわけではない。 ⇒形式的意義の行政法は存在せず、実質的意義の行政法は膨大な数が存在する。
・行政に関する法は、行政の組織および作用ならびにその統制に関する無数の法が全体として共通の指導原理をもった統一的な法の体系を構成するものである。 ⇒行政に関する法の例を列挙すると、国家行政組織法・地方自治法・国家公務員法・ 地方公務員法・行政代執行法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・土地収用法等がある。
・行政法学の任務の一つは、このような一見雑多な法規の間に存する共通の指導原理を明らかにすることといえる。
e.g.営業許可、営業停止、課税処分、補助金交付決定などは個々には別々のものだが、いずれも行政が一方的に国民の権利義務を決定する処分という点で共通しており、 「行政行為」という概念で考察することができる。 ⇒また、いずれも国民が勝手な判断で無視できない効力を有している点で共通しており、 「公定力」という概念で考察することができる。
問題第11問
○形式的意義の行政法が存在しない理由について説明
ア)法律の使い勝手の問題 ・「行政法」という名前の法律(法典)は理論的には作成可能である。しかし作成したとしても結果として膨大な条文の数になり、使い勝手が悪くなる。
イ)(特に国の)「タテ割り」行政 ・いわゆる霞ヶ関の役所で、国民を相手にしている基本的な単位である「課」は数百あるが、各課が2本の法律を所管していると計算しても、その数は軽く千を超える。
ウ)法治主義(理論的理由) ・法治主義によると、行政の活動は法律に根拠がある場合にはじめて行うことができる(法律の留保)。
・行政の仕事は、今日では非常に幅広く行われているが、となると、その根拠を定める(実質的意義の)行政法の数はどうしても多くなってしまうからである。
問題第12問
○行政法という法分野を形成する理由についての考え方について説明することができる
【論点と問題の所在について】 ●行政法は、さまざまな内容をもつ法令群からなる法分野である。
このように、さまざまな内容をもつ法令群が「行政法」という1つの法分野を形成するものとされるのは、いかなる理由からか。
(A)公法私法二元論の立場 ◎行政法を構成する無数の法令群は、全体としてみた場合には、その背後において何らかの共通な法原理、統一的な法原理に支配されている。
※その統一的法原理が「行政法原理」もしくは「公法原理」とよばれる。 いわゆる「公法私法二元論 」の立場がほぼこれにあたる。
(B)公法私法一元論の立場 ◎行政法を構成するとされる無数の法令は、必ずしも統一的な原理によって結び付けられているわけではなく、まったく便宜的な理由にすぎない。
・この場合に便宜的に一括される際の共通項は、せいぜい「行政に関する法令」ということになるが、そのことは理論的な統一性を意味するものではない。
※いわゆる「公法私法一元論 」の立場がほぼこれにあたる。
(C) ◎行政法を構成するとされる無数の行政に関する法令群の中に、何らかの形で理論的な共通性・統一性が見出せないことはないが、その共通性・統一性の範囲は(A)説よりもはるかに狭いものでしかない。
※この考え方の中にも、共通性・統一性が、どのようなものとして、どの程度認められるかについては、さまざまな考え方がある。
※ただ、おおむね、形式的・手続的な法規定の中には共通性を見ることはできても、実体法的な側面については統一的な行政実体法を語ることはできない、とする傾向が強い。
【判例】 ◎判例は,二元論・一元論どちらかを一律に採っているわけではない,というのが結論である。
問題第13問
○行政法の全体構造について説明できる。
T)はじめに 1)総説 ・実質的意義の行政法の数が多いと、何らかの分類・整理が必要になる。 ・これに関しては、行政法学会では「行政法の三本柱」と呼ばれる分類が、広く認められ、それに基づいていろいろな書物が書かれている。
2)行政法の三本柱 @行政組織法 A行政作用法(行政活動法) B行政救済法(行政統制法) 3)「三本柱」相互の関係(特に内容なし)
U)行政組織法 1)意義(→用語集) ・行政主体の組織に関する法。 2)具体例 ア)はじめに ・行政組織法に属するものとして、以下のようなものがある。
イ)国の行政組織について定めたもの ・内閣法、国家行政組織法 ウ)地方公共団体の行政組織について定めたもの ・地方自治法 エ)公務員関係を規律するもの ・国家公務員法、地方公務員法 オ)行政主体の物的要素である公物に関する法(公物法)
V)行政作用法 1)意義(→用語集) ・行政主体の作用ないし活動に関する法。 2)その他 ・行政法の大多数はこれに分類される。 ・行政作用法分野のうち、警察作用に関する法を警察法と呼ぶ。
W)行政救済法 1)意義(→用語集) ・違法な行政活動の是正や、行政作用によって生じた損害の補填に関する 法である。 2)行政救済法に属する一般法 ・行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法
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