学習テキスト 第1章 通則
※1条1項では、私権という権利そのものが、公共の福祉、つまり社会一般の利益に反するものであってはならないとしている。憲法13条でも「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という規定がある。 ・他者とのかかわりがある以上、私権をまったく自由・無制限に行使できるとなると不都合が生じる。民法1条には"基本原則"として、私権の性質や私権を行使する際についての制限を明記している。これに公共の福祉が含まれる。 ◆信義誠実の原則(信義則)の考え方を説明することができる。 ※信義誠実の原則とは、社会生活を営むうえで,他人の信頼や期待にこたえて,信義に従い誠実に行動しなければならないという原則である。 ◆信義誠実の原則(信義則)が機能する場面の例をいくつか挙げることができる。 ※一般社会生活においては,このいわば道徳的規範に違反しても,個人的ないし社会的な次元で非難されるにとどまる。これに対し,この信義に従い誠実に行動すべしとする規範は,人と人との間の法律生活においても,権利の行使および義務の履行にあたって,同じく行動の指導理念とされ,これに違反するときは法的にも不利益ないし制裁を課されるべきことが要請される。 ◇消費者契約における不当条項規制と信義則の関係について説明することができる。 ◆権利濫用の考え方を説明することができる ※1条3項にもあるとおり、権利をむやみに濫用してはいけないという考え方を「権利濫用の禁止」という。 ・権利を主張することが一見正当にみえることでも、社会的にみて許容できないような場合に、この法理が適用される。つまり「言っていることは正しいんだけど、他の事情との兼ね合いではちょっと言い過ぎではないか」というような場合などに適用される。 ◆権利濫用の例を挙げることができる。 ※<具体的事例> ● 建築基準法に則り、建物を建築したことによって日照権を侵害された者が、 ◆権利濫用か否かの判断基準について説明することができる。 ※権利の濫用か否かの判断は難しく、その判断は、権利者個人の利益と相手や社会に与える影響とを客観的に比較する基準と、権利者が、相手に何かしらの害意をもっていたなどの主観的な事情による基準のふたつあるが、個別の事情をみていくほかない。 ◇権利の行使が濫用であるとされたときの効果を説明することができる。 ※「権利の濫用」とされる場合には、権利行使の法的効果が否定され、他人に損害を与えた場合には不法行為として損害賠償や原状回復義務などが認められることになる。 ◇権利濫用と不法行為の関係を説明することができる。 ※(1)相手方に損害を与えた場合 <具体的事例> ● 建築基準法に則り、建物を建築したことによって日照権を侵害された者が、「権利の濫用」だとして損害賠償を求めたもので、裁判所は不法行為の成立を認めた事件(最判S47・6・27) |