学習テキスト

第2節 法の解釈・適用

◆民法の条文の解釈に関する方法にどのようなものがあるか、具体例を挙げて説明することができ る

(文言解釈、目的的解釈、反対解釈、体系的解釈等)。

※文言解釈とは、辞書的・文法的手法で文言の意味を明確化する解釈技法である。

※目的的解釈とは、法一般の目的ではなく、個々の法律や条文がどのような目的に基づいて作られているのかを根拠として解釈することを目的とするものをいう。

※反対解釈とは、法規の文言として規定されていない以上、 適用されないという解釈方法方法である。
(一般人は通行禁止となっていたら、 反対に部内者は通行できるとする解釈など)。

※体系的解釈等とは、
・論理解釈(体系的解釈)の内容は論者により微妙な違いがあるが、例えば、「法律を一つの論理体系に構成し、各条文をそれぞれしかるべき地位において、これと調和するような内容を与えようとするものである」と定義される。

・法令は、個別の法規が機械的に集合したものではなく、互いに有機的に結び付き、全体として一個の統一体を形成しているものとみるときは、その全体像から推理される原理は個別の成文法規を補完する「書かれざる法」にほかならず、この原理を取り入れて解釈することが論理解釈であるということになる。


◆条文の準用とはどのような意味を有するか、その基本的な考え方を説明し、具体例を挙げること ができる。

※「準用」という法令用語は,ある事項に関する規定を,他の類似の事項について,必要な修正を加えてあてはめると法令作成技術で,これを利用することで条数が増えるのを防ぐことができます。

・すなわち,「Aの場合には(法律要件),Bせよ(法律効果)」という条文を,A’の場合に準用すれば,「A’の場合には,Bせよ」という条文があるものと扱ってよいということになります。


◆条文の類推適用がどのような場合に認められるか、その基本的な考え方を説明し、具体例を挙げ ることができる。

※条文の類推適用とは、当該条文を直接適用することはできないが、利益状況が同じであるなどの理由により、当該条文を用いて処理をしようとするものです。

※「通謀」のない虚偽表示について94条2項を類推適用するものがあります。

本来94条2項は虚偽の表示を信頼した相手方を保護する趣旨ですので、虚偽表示をした当事者間に通謀がなくても、相手方の保護の必要性が高い場合があります。そこで、明文上は通謀がない場合に94条2項を「直接適用」はできませんが、「類推適用」することで相手方を保護することになる。

◇ 裁判所において事実認定と法的判断がどのように行われるか、基本的な考え方を説明することが できる。

※事実認定とは、裁判官その他の事実認定者(陪審制における陪審、裁判員制度における裁判官と裁判員など)が、裁判(刑事訴訟・民事訴訟)において、証拠に基づいて、判決の基礎となる事実を認定することをいう。


◆事実審と法律審の相違を具体例を挙げて説明することができる。

※裁判が当事者の権利義務を決定するという重大な課題を担うことから,訴訟法は,審級の異なる裁判所が3度にわたって審理を重ねる三審制度を設けて判決の適正を期している。

各審級間の合理的職務分担を図るため,第一審・控訴審(第二審)を事実と法律の両面から事件を審理する事実審とし,上告審(第三審)を法律面に限って審理を行う法律審としている
(控訴審と上告審をあわせて上訴審という)。

・そこで,事実の認定(事実問題)は控訴審かぎりで決着をつけることとし,上告審は法令違反(法律問題)を中心に審理をすることにすれば,単一または少数の裁判所が法的基準の最終的決定の任務を集中的に引き受けることになって,法令解釈の統一に資することになる。

◇最高裁判決の判旨のうち、真の判決理由と傍論を区別する考え方がどのようなものであるか、そ れを区別する意味は何かを、それぞれ具体例を挙げて説明することができる。

※厳密な意味では、裁判所が示した判断全てを「判例」と呼ぶわけではなく、「一定の法律に関する解釈で、その法解釈が先例として、後に他の事件へ適用の可能性のあるもの」のみを「判例」と呼ぶ。判決の一部を取り出して、「先例」としての価値のある部分(レイシオ・デシデンダイ)のみが「判例」であるとの考え方もある。この場合、その部分に含まれない部分を「傍論」(オビタ・ディクタム)と言う。