学習テキスト

2−3 会社の代理商

○代理商(会社の代理商)とはどういうものか、商業使用人(会社の使用人)と対比しつつ説明することができる。

・会社が事業を拡大しようとする場合、各地に営業所を設けて、使用人を派遣するという方法もありますが、その土地の事情に詳しい人や法人に事業の補助を依頼した方が合理的な場合もあります。

※このような場合に、会社外の人・法人に、取引の代理や媒介を委託するその相手を「代理商」といいます。

・つまり、代理商は、特定の会社から取引の代理・媒介を継続的に委託された会社組織外の「独立した商人」ということになる。
 (損害保険代理店がその典型)

※代理商契約の法的性格は、委任または準委任である。
よって、代理商契約の終了に関しては、委任の一般終了事由があれば終了します。(民法653条)
(委任者または受任者の死亡、破産。受任者の後見開始の審判。)

※また、契約期間を定めなかったときは、2か月前までに予告することで契約を解除することができ(会社法19条1項)、やむを得ない事由があるときは、いつでも契約を解除することができます。(会社法19条2項)

代理商の権利と義務
代理商契約は委任または準委任の性格を有するため
 ・必要経費の前払い請求権(民法649条)
 ・代理商が必要な費用を支出したときの償還請求権(民法650条)
などが認められるほか、

※代理商が行った取引によって生じた債権が弁済期にあるときは、 その弁済を受けるまで会社のためにその代理商が占有する物や有価証券を留置できることになっている。(会社法20条)

代理商の義務としては以下があります。

特定の会社の許可がなければ、自己または第3者のために、会社の事業の部類に属する取引をすることはできない。

※特定の会社の許可がなければ、会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役、執行役、業務執行社員となることはできないとされている。

○代理商がこの義務に違反して取引を行った場合、
・その行為によって代理商・第3者が得た利益の額が、会社に生じた損害の額と推定され、会社は、損害賠償を請求することができるとされる。
(会社法17条)

※それに対して、商業使用人は
雇用契約により特定の商人に従属し、かつその対外的な商業上の業務を補助する者をいう。
 ・その典型は、「支配人」である。
 ・「従属」とは、営業主の指揮監督に服すること
 →雇用契約があっても職人のように対外的代理権がない者はここでは商業使用人に含めない。
 (会社の代表取締役や代表社員は、会社の機関として営業に従事するのであって、商業使用人ではない)

※およそ個人企業であれ、会社企業であれ、企業規模が大きくなれば、営業主が自ら営業活動をすべて行うことはできない。

そこで、当然、営業活動を適切・合理的に行うために他人の労力を利用せざるをえない。そこで、営業上の補助者として商法は様々な規定を定めるが、このうち、企業の内部において企業を補助する者を商業使用人という。(企業の外部において補助する者を代理商という)

※商法は、商業使用人として、
@支配人 
A番頭・手代 
B物品販売店の使用人 
の3者を規定している