学習テキスト 第1章 会社の概念 ○法人格否認の法理とはどういうものかを説明し、最高裁判所が、当該事件の解決のために会社の法人格を否認することができる場合として例示する事例を挙げることができる。 ◆法人格否認の法理 ※会社法に明文はありませんが判例により認められています(最S44.2.27)。 たとえば債務者が強制執行を免れるために、自己の財産を出資して会社を設立するような場合のような場合に使われる。 【参考】 @濫用事例 A形骸事例
○定款所定の目的により会社の権利能力が制限されることを説明することができる。 ◆定款所定の目的による制限 ※類推適用とされるのは、民法は「公益」法人の規定なので、「営利」法人である会社には、直接には当てはまらないからである。 @類推適用肯定説 (説明理由) A類推適用否定説 (理由) B判例の立場 ※しかし、取引の安全を考えて、目的を緩やかに解して、定款に記載(記録)されている目的たる事業及びその事業を達成するのに必要な行為はすべて目的の範囲内にあるとします。 そして事業を達成するのに必要な行為か否かは、会社代表者の主観的意図ではなく「行為の客観的性質」から判断すると判示している。 従って現実の訴訟で目的の範囲外で無効とされます例はまずないといわれています。
○会社が「営利法人」であることを、商人であるための要件である「営利性」と対比して説明することができる。 ◆営利法人と商人の要件「営利性」 ※自己の名をもって「商行為をすること」を業とする者のことを「商人」というと商法では規定している。 (法人格)
○会社法における4種類の会社の特徴について説明することができる。 ・会社法の会社の種類は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類。合名会社・合資会社・合同会社は、「持分会社」と総称され、その規制の下に置かれる。 ※合名会社 ※合資会社 2、合資会社にあっては、有限責任社員であっても、株式会社などの社員(株主)のような間接有限責任ではなく、会社債権者に対して直接責任を負う直接有限責任社員であるとされる。ただし、会社に対し出資を履行した場合は、その価額の分については間接責任となる(580条2項)。 ※株式会社 ※合同会社 合同会社の内部関係はシンプルな設計であり、社員全部が有限責任ということもあり、新規設立が認められなくなった有限会社に代わって今後多く設立されることが見込まれる会社形態である。
○会社が商法4条1項の商人となることを説明することができる。 ・会社法は,会社が商人であるかどうかについて規定を置いていない。 ・この事案は,特例有限会社である甲会社を債権者とし,乙を債務者とする債権を担保するため,乙所有の不動産に抵当権が設定されていたのあるが,乙が,原審第1回口頭弁論期日において,当該被担保債権につき商法552条による5年の消滅時効が完成しているとしてこれを援用したというもの。そこで,商法522条の適用が問題とされたものである。 商法522条 商法4条1項 会社法5条 ・「会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条),会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と同義と解される。)。 ・前記事実関係によれば,本件貸付けは会社であるYがしたものであるから,本件貸付けはYの商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,本件貸付けがAのXに対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けがYの事業と無関係であることの立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しないことは明らかである。 ※そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。」
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