学習テキスト 法律による行政の原理 ○法律による行政の原理について説明することができる。 T)法律による行政の原理の意義 1)意義(→用語集) 2)法律による行政の原理の確立とその重要性 U)趣旨 ⇒法律が君主と国民の双方を拘束するものとなる(法律の両面拘束性) ○法律による行政の原理の内容について説明することができる。 T)法律の優位の原則 2)妥当範囲 3)根拠 (A)多数説 (B)少数説 4)法律の優位の原則と慣習法 →そこで、行政法の分野においては慣習法が成立することは困難であるといわれる。 ・しかし、慣習法の成立が否定されるのは、「法律による行政の原理」と抵触する限りにおいてであり、既存の法律に反さず、また「法律の留保の原則」にも反しない限り、慣習法の成立する余地が理論的にないわけではない。 ○法律の留保の原則についての問題と学説について詳しく説明できる U)法律の留保の原則 【論点と問題の所在】 ※この原則から、「行政活動はすべて、各省設置法、地方自治法などの行政組織法により確定された権限分配の範囲内において行われなければならない。」 ※そこで、いかなる行政活動に作用法上の法律の根拠が必要か問題となる。 (A)侵害留保説(行政実務) ◎行政活動を、単に法律の機械的執行にとどまるものではなく、行政主体の独自の判断に基づき「行政目的を追求する自律的な作用」と捉え、行政活動が原則として自由なものであることを前提とする。 @自由主義原理の見地からは国民の自由および財産が侵害される行政活動について法律の根拠を要求すれば足りる。 (批判) 自由と財産の侵害にあたらない限り、国会のコントロールを受けることなく行政が自由に活動し得ることとなると、一方において行政の民主的コントロールからして問題である。 A⇔法律の根拠がない行政活動によって国民の現実、あるいは将来の生活 が規定されてしまう。 たとえば、「補助金の交付のような授益的活動や、営造物の設置のよう な国民の権利・利益と直接かかわりのない活動に法律の根拠を不要とすること」は、これらが国民の税金の利用であり、間接的に国民の権利・利益にかかわることがある点で問題がある。 B⇔公害規制のような、ある国民にとっては利益になるが、他の国民にとっては侵害となるような行政活動も少なくなく、「侵害行政と授益行政を機械的に二分することは妥当でない。」 (B)全部留保説 ・自由主義原理のみならず、民主主義原理をも徹底すべきであるから、 (批判) A⇔法律だけが民主国家における正当性の淵源であり、 (C)権力留保説 ※侵害留保説との違いは、「権力的行為であれば授益的行為についても法律の根拠を必要とするところにある」(たとえば補助金交付の「決定」など)。 ・一切の権力の淵源はこれを国会の制定する法律に求めなければならないとして 民主主義的観点を強調する一方、全部留保説に対する批判を踏まえて一定の行政活動の自由領域を承認する。 【批判】 ⇔行政の現代的手法としてその重要性を増している行政指導などの非権力的な行政活動が、すべて法律の留保の原則の枠外に置かれることになってしまい、侵害留保説に対する正面からの批判にはなっていない。 (D)社会留保説 (E)本質性留保説 (E´)塩野説(本質性留保説と類似) ※実際の行政活動は侵害留保説によっており、たとえば、生存者叙勲は行政の一方的判断で決定されるが法律ではなく政令に基づいて行われている。侵害的でないからというのが政府見解である。 ※行政実務について、「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない」という内閣法11条の規定も侵害留保説によっているものであることがうかがえる。 ○法律の留保の原則において根拠となる「法律」について説明できる V)法律の留保の原則において根拠となる「法律」 ※根拠規範とは、「行政活動の実体的要件・効果を定めた規範を指す。」 ※組織規範とは、「行政機関の所掌事務を定める規範、いわゆる権限配分規定」をいう。 ※規制規範とは、「行政が活動できることを前提として、その実施の適正を図るために定められた規定」をいう ○法律の(専権的)法規創造力の原則について説明できる 1)意義 ※行政のみのよって権利義務を生成させるとすれば、国民からのチェックが機能しなくなってしまう可能性があります。 それで、国会によって制定される法律によってだけ、権利義務に関する法規を定めることができるという原則を採用している。 国会議員は選挙によって国民によって選ばれるので、この原則によって行政をチェックできると考えられる。 2)趣旨 ※ただし、今日、行政権にも一定の規律の下に法規を定立することが認められ、行政権に法規を制定する権限が一切認められないわけではない。 |